【案内人ブログ№102】(2026年3月)三浦綾子さんと山崎豊子さんの接点についての断想  記:森敏雄

案内人ブログ

私は以前、三浦綾子さんと向田邦子さんの接点を取り上げてみた(三浦文学案内人プログ№62参照)。

今回は三浦綾子さんと山崎豊子さんの接点を取り上げてみたい。

綾子さんの生年月日は1922年(大正11年)4月25日生まれ。山崎さんは1924年(大正13年)1月2日生まれ。二人はほぼ同時期にこの世に生誕した。綾子さんは旭川で77年の生涯を閉じた。実家=サラリーマン家庭、7人きょうだいの第5子・二女であった。山崎さんは大阪で89年の生涯を閉じた。実家=船場の老舗昆布屋、5人きょうだいの第3子・長女であった。

子ども時代、綾子さんは虚弱体質で本のとりこ。小5で小説「ほととぎす鳴く頃」を書き主人公の淡い恋心をちりばめた。山崎さんはやんちゃで、男の子と張り合った。本好きで懸賞作文応募が楽しみだった。よく景品をもらった。性癖は共に天真爛漫。綾子さんは、優れたものには絶対服従で、山崎さんは納得いくまで調べないと気が済まなかった。作風をみると、綾子さんの場合は小5でも読める平易な文体を心掛けた。口述筆記を常とし、キリストの愛を知ってほしいと願った。山崎さんの場合は徹底した取材。取材の鬼と呼ばれた。大阪商人ものに続き、社会派小説を生み出した。10年1作品?

二人に共通するのは、青春と共に”戦争”があったということだろう。これは、実に大きな問題であった。

綾子さんは女学校を卒業し、歌志内の神威小学校の教師になった。2年後旭川の啓明小学校に転勤。終戦の翌年退職。教師生活7年間であった。昭和21年6月から13年に及ぶ療養生活を経て、昭和34年5月三浦光世氏と結婚。昭和39年7月小説「氷点」が朝日新聞懸賞小説に入選。賞金1000万円。自分たちのためには1円も使わなかった。以後綾子さんは作家活動に専念する。

山崎さんは京都女子専門学校を卒業し、毎日新聞社大阪本社に入社。直属の上司井上靖の指導を受け、二足の草鞋を履く。昭和33年小説「花のれん」で直木賞受賞。即、専業作家となる。大阪商人ものから社会派小説に転身、戦争3部作など「戦争」の残した傷跡やひずみを鋭く追及した。こうして二人は、多くの読者を持つベストセラー作家となった。

三浦綾子文学の魅力は、①心が洗われる ②優しい気持ちになる ③前向きに物事を考えられるようになる ④謙虚な気持ちになる ⑤泣ける・感動できる、という点にあるだろう。

山崎豊子文学の魅力は、①現場取材によるリアルな描写となっている ②広大なスケール

感や人物設定と描写の妙がみられる ③テーマ設定が普逼的である、という点にあるだろう。

作品の特徴だが、三浦綾子さんは「氷点」で「原罪」という視点を世間に知らしめた。山崎豊子さんは社会派小説で人間ドラマを展開し、ほんものの「男」の魅力を引き出した。

戦争に対する捉え方だが、当然の如く両者共に絶対反対! 平和第一という見解に立つ。続編の問題だが、三浦綾子さんは「氷点」の6年後「続氷点」を著した。「氷点」を読んだ女子高校生が”大人は勝手だ”と抗議し、自死したことがあった。続編は”ゆるし”がテーマである。山崎豊子さんは「白い巨塔」の4年後「続白い巨塔」を著した。財前勝訴に納得できない多くの読者の強い要望が、彼女の心を突き動かしたのだ。ここで、文豪井上靖との関わりについて触れておきたい。

綾子さんの場合は、生誕の地が同じ「旭川」。大先輩である。綾子さんは「海嶺」を書いた時、井上靖の「おろしや国酔夢譚」を参考にしたと語っていた。また、綾子さんは井上靖記念館・「赤い実の洋燈」読書会創刊号に「失われた機会」という一文を寄せている。

山崎さんの場合は、前述のとおり作家山崎の産声は井上氏との出会いにあったと言えるだろう。山崎さんは、山崎豊子全集第17巻で井上氏の姿を「リュックサック」というエッ

セイに収めている。

秋岡康晴著「私の国語教室」によると、2006年(平成18年)3月4日旭川中央図書館主催で、「井上靖・三浦綾子両館合同講演会」が開催されたことが載っている。2020年(令和2年)には井上文学館非常勤職員平野武弘氏による「文学講座」/5月15日「井上靖と旭川」及び5月29日「井上靖の生涯と文学」が開かれており、2025年(令和7年)には井上文学館職員上田郁子氏による「文学講座」/10月16日・10月30日「井上靖文学の魅力」①②が開かれた。私はこのような両館の動きを歓迎するものである。

最後に大作家の最新ニュースをお知らせし、このブログを閉じたい。三浦綾子文学&山崎豊子文学、共に長く読み継がれていくに違いない。

三浦綾子さん……十勝岳爆発(大正泥流)100年となる今年、「泥流地帯」映画化のクランクイン&クランクアップが期待されている。映画の実現は町民の悲願である。

山崎豊子さん……昨年、生誕100年を記念してパネル展や企画展、映画上映会などが華々しく実施された。沢山のファンで販わったことでしょう。

文献/込堂一博著「三浦文学の魅力と底力」

洋泉社MOOK編「山崎豊子全小説を読み解く」

大澤真幸著「山崎豊子と<男>たち」

新潮社山崎プロジェクト室・編「山崎豊子スペシャル・ガイドブック」

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