た・だ・ちゃ行

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オノマトペで楽しむ三浦綾子(117)“ どっ”

「一体どうしました?」菊が顔をのぞきこんだ。信夫は顔をそむけて菊のそばをすりぬけ、仏間にかけこんだ。仏壇の前に坐ると、何か自分でもわからぬ悲しみがドッと胸に溢れた。祖母がかわいそうなのか、自分がかわいそうなのか信夫にもわからない。ただ、涙が...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(104)“ つるつる”

「何? お坊さま?」おどろいて信夫は思わず大きな声を出した。「うん、お坊さまだ」「どうして、お坊さまになりたいの? 頭をつるつる坊主にして、長いお経を読むんだろう?」 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]9、10、11、12より 〈著作物の使...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(87)“ぼんやり”“ちらり”

夕方になって父の貞行が帰ってきた。待子は、いつか道で会った時のように、大手をひろげて貞行の腰にまつわりついた。信夫は、おかえりなさいとあいさつすることも忘れて、ぼんやりとそれを眺めていた。貞行が、ちらりとその信夫をみて、肩をたたいた。 三浦...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(65)“とんとん”

「まあ、そんなにたくさんの人出でしたか。それでは知った人も行っていたでしょうね」トセは急に肩がこったように、自分の肩をトントンと叩いてみせた。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]138、139より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(59)“ちらり”

「何ですか。そんなにあわてて、士族の子が見ぐるしい」トセの声に信夫はちらりと父をみて、「おばあさま、行ってまいります」と、大声であいさつをした。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]36、37、38、39より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(33)“すべすべ”“つるつる”

先生が近よってくると、何かいい匂いが漂う。祖母のトセのようにびんつけ油の匂いとはちがうと信夫は思った。先生と手をつなぐと、やわらかくて、すべすべしていて、信夫の手までつるつるになるような感じだった。 三浦綾子 『塩狩峠』[鏡]48より 〈著...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(31)“つくづく”“きちん”

信夫はつくづくと思ったものである。今も祖母がきちんとひざをそろえて信夫のそばに坐った時、信夫は何となく虎雄の母の姿を思い出した。 三浦綾子 『塩狩峠』[鏡]28、29より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(6)“どっか”、“きりっ”

そして男は、その屋台に上がりこみ、真ん中に敷かれた薄い座布団にどっかとあぐらをかく。元の地色もわからないような帆前掛をきりっと締め直し、男は並べた下駄を手に取って順に直していく。 三浦綾子 『銃口』[縁](一)より 〈著作物の使用について〉...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(1)“つくづく”、“きりっ”

信夫は今、鏡にむかってつくづくと自分の顔をみつめていた。形のよい円らな目、通った鼻筋、きりっとしまった厚くも薄くもない唇。 三浦綾子 『塩狩峠』[鏡]5より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する...